雲居の神子たち
やはり尊は自分の素性を明かすことはしなかった。
不機嫌そうに俺をにらみ、

「殺すぞ」
冷たい声で言い放った。

きっとこれが仮面を外した尊。
冷酷で、強くて、怖い男。
それが本当の姿なんだろう。

「悪い、ちょっとした好奇心だ」

気にはなるが、聞いてしまえば気安く声をかけられなくなる気もする。
はぐらかされてよかったのかもしれない。
そんな思いでいると、

「なあ」
塀の向こうを眺めていた尊が、声をかけてきた。

「どうした?」

「静かすぎないか?」

へ?
そりゃあ夜だし、静かでもおかしくないだろう。

「みんな寝ているんじゃないのか?」

「そうか?それにしても、住居側が暗すぎる」

塀を越して漏れてくる光は、確かに暗い。
しかし、人を奪い取るように連れ込んだんだ。
煌々と明かりをつけてどんちゃん騒ぎでもないだろう。

「行ってみよう」
「はあ?」
間抜けな声を上げてしまった。

「様子がおかしい」

「・・・わかった」

異論もあるが、ここまで真剣な顔をした尊を止めることはできなかった。
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