雲居の神子たち
尊の言う通り、家の中は驚くくらい静かだった。

深夜のせいか店舗の方も静まり返り明かりも消えている。
使用人たちもすでに休んでいるんだろう。
しかし、気になるのは住居側も真っ暗なこと。
もう寝たんだろうと言われればそれまでだが、そのままスヤスヤと眠ったとは考えにくい。

おかしい、何かが変だ。

「静かすぎるな」
「そうだな」

俺の感じた不安は尊も感じていたらしい。

さあどうしようかと思っていると、尊が何やら小さな竹笛を口にした。

かすかな風の音にしか聞こえない竹笛の音。
俺には尊の行動の意図がわからない。
しかし、

ガサッ。
庭の茂みの揺れる音。

ガサガサッ。
それは一か所ではなく、俺たちの周りを囲むように前後左右から聞こえる。

囲まれた。
それが正直な感想。

「稲早の所在を確認しろ」
低い声で命令する尊。

ザワザワと再び茂みが動き、気配は消えていった。

俺は信じられない思いで、ただ尊を見つめるしかなかった。
< 75 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop