雲居の神子たち
ヒュー。
尊と2人庭にたたずむ俺の耳に、風の音が聞こえた。

それは意識しなければ聞き逃してしまうほど小さな音。
しかし、

「どうだった?」

尊はさも当然のように、空に向かって声をかける。

「すでにこちらに姿はありません」
茂みから聞こえる男性の声。

「今はどこにいる?」

「主とともに町はずれの別宅に向かったようです」

「わかった」
尊が返事をすると、俺たちの周囲を囲む気配が消えた。

はあー、俺は今一体何を見ているんだろうか?
きっと彼らは尊の従者。
それも一人や二人ではなかった。
こいつ、本当に何者なんだ。


「町はずれの別宅にいるらしい、行くぞ」
「ああ」

聞きたいことは山ほどあるが、どうせ聞いても答えてはくれないだろうから、今は素直に従うしかない。
とにかく稲早を救出することが最優先なんだ。

俺と尊は町はずれにあるという別宅へと駆けだした。
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