雲居の神子たち
数分後部屋に入ってきた一人の女。

見えているのは首から上のみで手も足も覆われた神官のような姿なのに、醸し出す空気は魔。
神に仕えるものではありえない。

「この子が白蓮?」
女が私の顔を覗き込む。

「いや、この子は違う」

え?

「どういうこと?」
眉間にしわを寄せる女性。

「白蓮ではないが、負けないくらい稀有な存在だ」

ええ?
もはや頭がパニック状態。

なんで、男は知っているの?
私のことは白蓮の家族しか知らないはずなのに。
おかしい、絶対におかしい。

「ふーん、神子様ね」

「ん?」
女の言葉に男の方が反応した。

「気が付かなかったの?この子は深山の神子様よ」

「えっ」
男が一歩私から遠のいた。

どうやら私が神子だってことは知らなかったらしい。
まあね、国民のほとんど神道の雲居で、深山の神子は敬うべき存在。
間違っても手を出すことなんてありえない。
それこそ神の祟りがあると、多くの民は思っている。

「知らなかったの?」
「あ、ああ」

本当に知らなかったらしい。その証拠に、男の顔から血の気が引いていった。
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