雲居の神子たち
午後7時。
深山の参道で待ち合わせして、私たちは里へ向かった。

「須佐、ごめんね」
突然の呼び出しに応じてくれた須佐に、八雲が謝る。

呼び出しておいて何だけれど、本当に来るとは思わなかった。
バレたら、ただでは済まないのに。

「何で、来る気になったのよ」
駆け足で山を下りながら、須佐に聞いてみた。

「稲早はなぜ来たの?」
「それは・・・」
なぜだろう?

宿舎を出て少し自由になったのをきっかけに、今まで抑圧された気持ちが吹き出した感じ。

「桜祭りって、夜店がたくさん出るんだよね?」
須佐が、楽しそうに笑う。

はあー。あなたの目的は食い気ですか?
確かに、深山では食事は生きていくための物と教えられていたし。
甘い物も、美味しい物も久しく口にしていない。
須佐の気持ちも分からないわけではない。
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