雲居の神子たち
それから半時、男は「手を引くからどこにでも連れていけ」と言い放った。
どれだけ興味があっても信仰の対象である深山の神子に手を出すことはできないと判断したらしい。

今度は女の手によって、再び袋に詰められた私の体。
その瞬間、目の前が暗闇に変わった。
どうやら私が入れられたのはただの麻袋ではなく、呪術のほどこされたものらしい。
だから、この袋に入れられると魂の離脱ができなくなってしまう。

「殺すのか?」
別れ際、男が放った。

「いいえ、まだ殺さない。できることならずっと、私の側に置いておくわ。でも、敵になりそうならすぐにでも命を絶つ。この子が持っている力は世界を変えるほどの力があるんだから」

嘘だー。
女の言葉を聞いて心の中で絶叫した。

私は何の力もない。
雲居の神子たちのほとんどがいくらかの霊感を持っているのに、私にはない。
それは『雲居の直系ではないから』『不倫をして生まれた子だから』
小さな頃からこの容姿のせいもあって言われ続けた陰口。
そんな私に力なんてあるはずがない。

「じゃあね」
女が声をかけ
「ああ」
つまらなそうな男。

誰かに担がれた私は、身動きできないまま身を任せた。
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