雲居の神子たち
またまた乗り物に乗せられ、今夜二度目の移動。
はっきりとした場所はわからないけれど、聞こえてくる物音からは町の中心に連れ戻されたよう。

こんなに移動を繰り返せば、尊や石見には消息をつかむことさえ難しいだろう。
逃げ出すなら自力で何とかするしかないが、今は身動き一つできない。

――ところで、神子様の名前はなんて言うんだい?

言葉ではなく、直接頭の中に響いた念の声。

え、名前?

――そう名前だよ。

えええ、この人、私の心を読んでいる。

――教えてくれないかい?

嫌よ。

名前は人の本質。
名前をとられれば、その呪縛によって動きを封じられることもある。
だから、むやみに名を名乗ってはいけない。
随分小さい頃に教えられた。

――いいさ。いつか教えておくれ。

女は強引に聞き出そうとはしなかった。

この女、本当に何者だろう。
何よりも目につく金色の瞳は、魔物が持つには美しすぎる。
ここから逃げたい思い半分、女のことが知りたい気持ち半分。
私は不思議な気分だった。
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