雲居の神子たち
町はずれにある男の別宅にやってきてからすでに半時。
中にいるものと疑わなかった俺に、「すでにここにはおられないようです」と報告があがってきて、石見と2人潜入手段を探していた俺は驚いた。

「いないってどういうことだ?」
説いただす俺に、
「何者かによって連れ出されたようです」
影は事務的に報告する。

何者かって、今回の首謀者は米問屋の主だろう。
それとも、さらなる黒幕がいるっていうのか?

「あの男とは別の第三者が存在するって意味か?」
「はい」

「何者だ?」

「現在調べておりますが、魔導士がかかわっているようです」
「魔導士?」

それは厄介だな。
米問屋の主と魔導士では危険のレベルが違いすぎる。
こうなったら一刻も早く稲早を救出しなくてはならない。

「多少手荒な手段をとっても構わないから、急いでくれ。稲早の居所を確認して、安全を確保したい」
「はい」

ここまで強く命じれば、すぐに稲早を探し出してくれるだろう。
騒ぎが大きくなれば祖国に俺の所在を知られることになりかねないが、今はかまっていられない。
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