雲居の神子たち
「これからどうするんだ?」
別邸の高い壁を見上げながら、石見が聞いてきた。
すでに稲早がここにいないとわかった以上、この場にいる意味はない。
「いったん町に戻ろう」
そうしているうちに、きっと陰からの知らせが入るはずだ。
「なあ」
少し前に走った道を逆走する俺と石見。
色々と思いを巡らせる俺に、石見が声をかけた。
「何だ?」
「なぜ、俺に誘拐されたんだ?」
は?
意味が分からず石見を見た。
なぜって、誘拐したのはお前の方だろう。
その理由を俺に聞かれても困る。
「あれだけの従者に守られているお前なら、誘拐なんていくらでも阻止できただろう。仮に誘拐されたとしても、俺と父さんなんて簡単に撃退できたはずだ」
「まあな」
正直、影なんて使わなくても自分で逃げ出すことは可能だった。
「なぜそうしなかったんだ?」
「それは・・・厄介ごとに巻き込まれる煩わしさよりも、稲早や白蓮に対する興味の方が勝ったってことだ」
「それは、2人がお前に旅の目的にかかわっているってことか?」
「かもしれない」
こうして話していて気が付いた。
石見は頭のいいやつだ。
農家にしておくにはもったいないくらいに回転が速くて、機転も利く。
「お前も白蓮を狙っているのか?」
「それは違う。俺は白蓮や稲早を物のように扱うつもりはない」
「そうか」
はっきりと答えた俺に、石見は安心したようだった。
別邸の高い壁を見上げながら、石見が聞いてきた。
すでに稲早がここにいないとわかった以上、この場にいる意味はない。
「いったん町に戻ろう」
そうしているうちに、きっと陰からの知らせが入るはずだ。
「なあ」
少し前に走った道を逆走する俺と石見。
色々と思いを巡らせる俺に、石見が声をかけた。
「何だ?」
「なぜ、俺に誘拐されたんだ?」
は?
意味が分からず石見を見た。
なぜって、誘拐したのはお前の方だろう。
その理由を俺に聞かれても困る。
「あれだけの従者に守られているお前なら、誘拐なんていくらでも阻止できただろう。仮に誘拐されたとしても、俺と父さんなんて簡単に撃退できたはずだ」
「まあな」
正直、影なんて使わなくても自分で逃げ出すことは可能だった。
「なぜそうしなかったんだ?」
「それは・・・厄介ごとに巻き込まれる煩わしさよりも、稲早や白蓮に対する興味の方が勝ったってことだ」
「それは、2人がお前に旅の目的にかかわっているってことか?」
「かもしれない」
こうして話していて気が付いた。
石見は頭のいいやつだ。
農家にしておくにはもったいないくらいに回転が速くて、機転も利く。
「お前も白蓮を狙っているのか?」
「それは違う。俺は白蓮や稲早を物のように扱うつもりはない」
「そうか」
はっきりと答えた俺に、石見は安心したようだった。