雲居の神子たち
ガタンッ。
突然部屋の外から大きな音がした。

「おや、神子様にお迎えが来たようだ」

え?

バンッ。
今度はドアをけ破る音。

そして現れたのは、須佐と尊と石見の三人。

「稲早、大丈夫か?」
須佐が駆けよってくれるけれど、私は声が出ない。

「しっかりしろ、すぐに助けるからな」
石見がそっと抱き上げてくれた。

「このまま黙って返すと思うのかい?」
意地悪い顔をする女。

「返してもらうさ」
尊の方が一歩女に近づいた。

多勢に無勢ではあるけれど、ここは女の家で、女は魔法を使う。
状況的には私たちが不利に思える。

「おや、あなた様は?」
尊の顔を見た女が、驚いた表情をした。

「俺の顔がわかるということは、おとなしく渡した方が身のためだってこともわかるな?」
さらに脅しをかける尊に、
「そうかい。若様のお気に入りとはね」
女は独り言のようにつぶやく。

女は尊を知っているらしい。
それも、若様と呼んだ。
尊、あなたは一体、

「若様のお気に入りとなればますます欲しくなるんだがねえ」

「そのためにおまえ自身が命を失ってもいいのか?」

「それは・・・イヤだね」

「じゃあ、諦めろ。またこいつに手を出せば、その時は俺が本気で相手をするぞ」

いいなと念を押し、尊が石見から私を奪い抱き上げる。

よかった、助かった。
そう思ったら、緊張の糸が切れて涙が出そうになった。
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