雲居の神子たち
「逃げられたな」
悔しそうな石見。
「ああ」
尊は何か納得できない顔をしている。

「稲早、大丈夫か?」
駆け寄ってきた須佐。

「うん、平気」
あれ、声が出る。

女が消え、部屋の空気が焼き尽くされたことで、私の呪縛も消えたらしい。

待って、そうなると気になるのは白蓮のこと。
奴らは私が白蓮の偽物だと気づいていたし、もしかして・・・

「お願い、白蓮のところに連れて行って」
自分の状況も考えずに口にしていた。

「お前はバカか、その体で何ができるんだよ」
尊にはあっさり否定された。

「どうしても行くの」

言い切ってみたところで、尊に抱えられたままでは身動きできない。
わかってはいても、どうしても行きたい。

「お前の手当てが先だ」
やっぱり尊はきいてくれない。

でもね、私には策がある。
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