捨て猫は関西弁男子
「そう。ならいいんだけど…。」
大家さんが疑り深そうな顔をしつつ、首を傾げたその時。
「みゃあー」と武蔵が鳴いた。
これはまずい。
「あら?今、鳴き声が聞こえたわ。」
「そ、そうですかね。私、耳が遠いのでわからないです。」
苦しい言い訳をするけれど、さすがに誤魔化しきれないだろう。
悪いのは私だから謝って別の家に引っ越すしかない。



「あのですね、実は私…」
「こんちは。初めまして。」
覚悟を決めて切り出した私の声に別の声が被さった。
大家さんも私も不思議な顔をして声の主を見る。



絵画のように整った顔立ちに特徴的な青と黄色の瞳。
グレーの髪も服装も慌てて出てきたからか少し乱れている。
正体には薄々気づいているけれど私は何もわないことにした。

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