捨て猫は関西弁男子
「ご挨拶が遅れてすんません。かえ…坂井さんの恋人の武蔵っちゅう者やけど。」
「あら〜。初めまして。」
大家さんは私たち二人を興味深そうに見比べた。
まるでイケメンは意外と普通の女と付き合うのねと思っているようだった。




「あの、どうかされたんでっか?」
「今お宅から猫の鳴き声が聞こえたのよ。」
「あー、それ俺のモノマネや。猫の真似上手いんですわ。」
そう言うと武蔵は「みゃあぉっ」と鳴いてみせた。
「…そっくりね。」
大家さんはすっかり感心したようだった。
そっくりも何も本物なんだから似ないはずはない。
「これだけは得意なんや。」
「そう。じゃ、私は失礼するわね。お邪魔しました。」
大家さんは原因が判明した途端、そそくさと帰っていった。
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