捨て猫は関西弁男子
私はドアを閉めると肩で呼吸をした。
「これで問題はなくなったな。」
振り向くと武蔵は満足そうににかっと笑っている。
「……。いや、問題大アリなんですけど!
ねぇ、武蔵って人間だったの?
なんで猫になってたの?
ていうかどうして今まで隠してたの?」
知りたいことがありすぎて質問を次々と投げかけ、壁に武蔵を追いつめた。
「そんなぎょうさん質問されても急には答えられへん。それに…楓近いわ。」
武蔵との距離は手を伸ばせばすぐ届くほど。
勢い余って近づきすぎたようだ。
「ご、ごめん。」
私は一歩後ずさりして姿勢を整えた。




「俺の元の姿は猫や。
というか化け猫やな。
河童とかぬりかべみたいな妖怪の一種って思うてくれたらええ。」
「妖怪かぁ。だから喋れるのね。」
「あれ驚かへんの?」
「え?」
「だって妖しやぞ。珍しいやん。」
「まぁ、そうだけど….。
私、どこかに妖怪は存在するって信じてたからそこまで衝撃ではないかな。」
むしろ大学で民俗学を専攻している身としては願ってもないチャンスだ。
「楓は変わってるな。」
「武蔵に言われたくないよ。」
「そりゃそうか。」
武蔵はぷはっと吹き出して端正な顔を歪めると言葉を次いだ。
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