江藤くんはループしがち
サッカーの試合が終わって教室に戻ってきた亜美は興奮気味に「江藤くんすごい!」を連発していた。


窓の中から活躍を見ていたから知っているけれど、実際にグラウンドで見るとやっぱり迫力が違うみたいだ。


「それで、なにか変化はあった?」


聞くと里香は突然首をかしげて「それが、なにもなかったんだよねぇ」と答えた。


「そんなワケないでしょ? 昼休憩をループしてるんだから」


「そう言われても、本当になにもなかったんだもん」


「生徒手帳は?」


「落とした様子はなかったよ」


里香の言葉に今度はあたしが首をかしげる番だった。


江藤くんはループする前に、確かに胸ポケットに触れていた。


だからてっきり、前回みたいに生徒手帳を落としたのだと思っていた。


「じゃあ、なんなんだろう?」


「わかんないよ。でも、江藤くんのあんなに楽しそうな顔、あたし初めて見たかも」


「え?」


「真央ちゃんのこともあったしさ、なにか変化したって感じはあるよね?」


変化した……?


それでもわからなくて、あたしはただただ首をかしげたのだった。
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