江藤くんはループしがち
江藤くんが教室へ戻ってきたとき、あたしは念のために声をかけた。


「さっきサッカーをしてたみたいだけど、生徒手帳を落としたりはしてないよね?」


その問いかけに江藤は一瞬目を見開いて胸ポケットに手を触れた。


「うん。落としてない」


ホッとした様子でそう返事をする。


やっぱり、生徒手帳はちゃんと持っているみたいだ。


じゃあ、どうしてループが始まったんだろう?


まさかあたしがずっと昼休憩だったらいいのに、なんて考えたから?


そう思ってすぐに考えをかき消した。


残念ながらあたしにそんな力はない。


そんな力があれば、もっといい人生を送っていると思う。


「俺、今日は1日も生徒手帳を見てない」


江藤くんが深刻な表情で言う。


「それって――」


どういう意味?


そう質問する前に世界がゆがんでいた。


グニャリグニャリと形を変えて、生徒たちの声もゆがみ始める。


また!?


今日はなにもなかったはずなのに、なんで!?
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