江藤くんはループしがち
「サッカーをしている江藤くんはかっこいいとか。あたしが知らない間にサッカー部に入ってたとか」


ブツブツと文句のように口にするあたしに里香は呆れ顔だ。


「それは単なる嫉妬でしょ?」


言われて目を見開いた。


「嫉妬!? な、なに言ってるの? なんであたしが嫉妬なんてしなきゃいけないの?」


まくし立てるように言ってそっぽを向く。


だけど自分の顔が熱くなっていくのがわかった。


きっと、頬は真っ赤に染まっていることだろう。


「亜美は本当に江藤くんのことが好きだね」


あたしを見て笑いをかみ殺して言う里香。


「す、好きなんかじゃ……っ!」


否定する言葉が途中で途切れる。


女子生徒たちが窓辺に向かい、サッカーを見始めたからだ。


「でも、今はそうじゃなくて、もっと重要なことをしなきゃいけないんでしょう?」


里香の落ち着いた声にあたしはうなづく。


腕組みをとき、大きく深呼吸をした。


「江藤くんは今日1日生徒手帳を見てないって言ってた。あたしが生徒手帳を落としたんじゃないかって質問をしたから、そのことを思い出したみたい」


「そっか。それって江藤くんが自分の生活を大切にし始めたってことかな」


今度は里香が腕組みをして、難しそうな表情になった。
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