江藤くんはループしがち
江藤くんの目にかすかに涙が浮かんでいる。


前を向くための痛みに必死で耐えているのがわかった。


「そうだ、緑川にはまだ言ってなかったよな」


思い出したように江藤くんが言う。


「俺、サッカー部に入ったんだよ。ずっと興味があったんだ」


その言葉に一気に気持ちが舞い上がっていくのを感じる。


「そ、そうなんだね!」


初めて聞いたように目を輝かせてうなづく。


「今日の昼もグラウンドでサッカーしててさ、やっぱりすごく楽しくて、大好きなんだってわかった」


うん。


見ていたから知っているよ。


「たぶん、真央も喜んでくれてると思うんだ」


「そうだね」


「緑川のおかげだよな」


「え、あたし?」


「あぁ。いつでも俺のこと気にしてくれてたじゃん。本当にありがとう」


そんな……。


最初はループを止めなきゃいけないっていう使命感からだった。
< 118 / 121 >

この作品をシェア

pagetop