江藤くんはループしがち
後悔しないこと
今回江藤くんのループに巻き込まれてわかったのは、後悔しないことだった。


1日1日を、1秒すら無駄にせずに全力で生きていくこと。


難しいかもしれないけれど、そうすることでループは最小限に抑えられる気がする。


「亜美、こっちー!」


川原で私服姿の里香が手を振っている。


あたしは手を振りかえしながら階段を駆け下りた。


3月下旬。


花粉は少し落ち着いてきて、今日は涙も鼻水も出ていなかった。


そして今日は江藤くんに誘われた練習試合の日でもあった。


「どうして1人で来なかったの?」


ジーンズにパーカー姿の里香が呆れ顔で聞いてくる。


「だって、いきなり1人で来る勇気なんてなかったんだもん」


江藤くんが誘ってくれたのはあたしだったけれど、どうしても1人で見学する勇気はなくて、里香にもついてきてもらったのだ。


「全く。後悔しないことが大切だってわかったはずなのに、これじゃ前途多難だね」


肩をすくめる里香は、すでにあたしの気持ちに感づいているようだ。


「おーい、2人ともー!」


川原のグランドからユニフォーム姿の江藤くんが手をふる。


「がんばってねー!」


里香が大きく手を振りかえして声をあげる。


あたしは江藤くんのユニフォーム姿だけでドキドキしてしまい、うつむいてしまった。
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