江藤くんはループしがち
『どうしたの亜美?』


『なんか、この辺がモヤモヤする』


あたしはそう言って胸のあたりを指差した。


なにか予感があるとき、あたしの胸は言いようのないモヤに包まれたようになるのだ。


あのときも、そして今回もそうだった。


『病気なの?』


里香が心配そうにあたしの顔を覗き込んできたとき、あたしは走り出していた。


自分でもどうして走っているのかよくわからない。


だけどこっちになにかがあると、強く感じるのだ。


後ろから里香が追いかけてくる。


雨は勢いを増していて、走るたびに水溜りを跳ね上げてしまう。


しかしそんなことも気にせずに走った。


そしてたどり着いたのは用水路のガードレールが途切れた場所だった。
< 14 / 121 >

この作品をシェア

pagetop