江藤くんはループしがち
あれは中学1年生の頃だった。


まだ入学して間もない4月下旬のこと。


すべての授業が終わり、ホームルームもあと少しで終わるという時間帯。


不意にあたしの衝撃が走ったのだ。


モヤなんて生易しいものじゃない。


命の危険を知らせるようなシグナルだ。


あたしは咄嗟に立ち上がり『みんな机の下に隠れて!』と、叫んでいた。


どうして『逃げて!』と言わなかったのか、今でも不思議だ。


あたしの絶叫に驚いた生徒も先生も一瞬硬直してしまっていた。


しかし、あたしが最初に机の下に隠れたことで、みんなも同様に隠れてくれた。


きっとみんななにがなんだかわからないままだったと思う。


だけどその直後だ。


体に感じるほどの地震が起こったのだ。


ロッカーの上で買っていた金魚鉢の水がゆらゆらとゆれて、生徒たちの中からは悲鳴も聞こえてきた。


あとで確認したらその自身は震度4だったが、けが人は一人も出なかったのだった。


それ以来、あたしのことを預言者扱いする生徒も出てきた。


でも、あたしが感じているのは違和感で、予言ができるわけじゃないから、その噂もすぐに消えていった。
< 16 / 121 >

この作品をシェア

pagetop