江藤くんはループしがち
☆☆☆

違和感の正体がわからないまま担任の男性教師がやってきてホームルームが始まった。


そしてすぐにいつもと違うことに気がついた。


先生はいつも穏やかな表情で、生徒たちを包み込むような笑顔を向けてくる。


でも今日はその表情がとても険しいのだ。


先生の違いを感じ取ったのはあたしだけじゃなかったようで、他のクラスメートたちも緊張した面持ちになって先生を見つめている。


「ホームルームに入る前に、みんなに知らせないといけないことがある」


教卓の前の先生はいつもより1オクターブ低い声で言った。


教室に入ってきたときから少しも笑っていない。


生徒たちの間に見えない緊張感が走っていることに気がついた。


先生は一度咳払いをすると、生徒たちを順々に見回した。


視線がぶつかった瞬間、つい視線を下げて逃げてしまう。


「今朝、同じクラスの江藤が死んだ」


静かな声が、静かな教室内に、爆音のように響いた。


一瞬自分の聞き間違いじゃないかと思った。


同じクラスの江藤君はあたしの隣の席で、今日は来ていないなぁなんてのんびりと考えていた。


衝撃が教室内に走り、先生の言葉を消化するために私語が湧き上がる。


先生はそれが静まるのを待って、また口を開いた。


「ついさっき連絡があって、先生もびっくりしたところだ」


先生は大きく息を吐き出して言った。
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