江藤くんはループしがち
それを見た瞬間、頭の中が揺れた。


実際にはゆれていなかったと思う。


だけど、それくらいの衝撃があたしの中に訪れていた。


『今朝、同じクラスの江藤が死んだ』


さっきの先生の言葉が頭の中で繰り返される。


しかし、頭の中の先生は服装が違った。


今日はスーツ姿だけれど、頭の中の先生はもっとラフな格好をしている。


『今朝、同じクラスの江藤が死んだ』


もう1度頭の中で同じセリフが流れた。


今度の先生はジャージ姿だ。


ぐるぐると回る思考回路。


あぁ、あたし、これを何度も経験したんだ。


不意に今朝からの違和感の正体が明白になった。


そう、あたしはこれを何度も経験してる!


江藤くんが死んだと聞かされる衝撃的な場面を何度も見てきてる!


ハッと我に返ってクラス内を見回す。


クラスメートたちはなにも気がついていない様子で驚きの声を上げ続けている。


そして先生が口を開く。


「江藤が死んだ原因は――」


そこまで言って、先生の声がゆがんだ。


それだけじゃない。


教室の風景、友達の顔がぐにゃぐにゃと原型を失い、崩れていく。


自分の手を見下ろしてみると、その手もゆがんでいた。


「自殺だ」


先生の声が聞こえた瞬間、あたしは目覚めていた。


サイドテーブルから聞こえてくるスマホのアラーム音にビックリして体を起こし、音を止める。


ついでに曜日を確認した。


2月3日。
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