江藤くんはループしがち
「でも、ひとつ不安だなぁ」


里香が不意に腕組みをして呟いた。


「え、なにが?」


「だって、個室って言っても30人全員は入れないよね? どうするの?」


「大丈夫だよ。5人ずつ順番でお祝いしてあげるの。ひとグループ5分くらいにすれば1時間で終わるし、途中で真央ちゃんが疲れちゃったら、休憩を挟むし」


ちゃんと、真央ちゃんや病院側への配慮も考えている。


「そうそう。飾りつけの準備は10分くらいでパパッと終わらせるつもりだけど、その間は江藤君が真央ちゃんを散歩に連れ出してよね?」


「え、俺が?」


突然話題をふられた江藤君が後方で驚いている。


「お兄ちゃんなんだから当然でしょう?」


「あ、あぁ。そうだな」


ぎこちないながらも頷いてくれる。


そして放課後。


すべての準備が整い、2年A組のクラス30人は同じバスに乗り込んでいた。


普段はここまで込むことのないバスの運転手は何事かと目を丸くしていた。


病院に到着してからはまず江藤君の番だった。


先に1人で真央ちゃんの病室に行き、散歩をしようと声をかけて外へ出る。


その連絡を受けたあたしたちが真央ちゃんの病室へ向かって飾り付けをした。


簡素だった病室の風景が色とりどりの折り紙で彩られている。


真央ちゃんの担当だという看護師さんも手伝ってくれて、ものの10分ほどで飾りつけは終了した。
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