江藤くんはループしがち
☆☆☆

家の新聞で確認しても、行きがけコンビニによってレシートを確認しても、やっぱり今日の日付は2月3日の水曜日で間違いないようだった。


でもあたしはもう、1度節分を経験している。


学校から帰ったらお母さんが恵方まきと豆を買ってきてくれていて、お父さんが鬼の面をつけて、あたしは中学生にもなってこんなことしないよ、なんて文句を言いながらも結構楽しんだんだ。


早足で2年A組に向かい、教室のドアを大きく開く。


「あ、亜美おはよー」


先に登校してきていた里香が手を上げて挨拶してくる。


「おはよう」


あたしは返事をしながら教室内を見回した。


みんななんの違和感も覚えていないみたいで、いつもどおりの風景がそこにあった。


だけどそこにはいるはずのない人がいた。


昨日の2月8日に先生から死んだと聞かされていた人……。


そう、江藤君だ。


江藤君はあたしの隣の席に座り、耳にイヤホンをつけてスマホで音楽を聴いている。


あたしはスッと息を吸い込んで江藤君に近づいた。


自分の席にかばんを置き、体を江藤君の方へ向けて椅子に座る。


「ねぇ、江藤君」


話かけるが江藤君は反応しない。
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