江藤くんはループしがち
☆☆☆

やっぱりダメだったのかな。


先生の声が廊下に聞こえてきたとき、あたしはそう感じて肩を落とした。


江藤君はまだ来ていない。


ポッカリとあいた席はとても悲しげに見えた。


あたしはうつむき、膝の上でギュッと両手を握り締めた。


どうか終わっていて。


あたしは次の日に行きたいの!


願うような気持ちで顔を上げ、ドアへ視線を向ける。


そのドアから入ってきたのは先生だった。


先生は神妙そうな表情を浮かべて教室内を見回し、それから教卓へと向かった。


あぁ……。


また、繰り返すのかな。


「実は今日、大切な知らせがある」


先生の重たい声に教室の中が水を打ったように静かになった。


全員が教卓へ視線を向けている。


あたしは先生の次の言葉を待つしかなかった。


きっと今回も訪れるであろうめまいに備えながら。


「大切な知らせというのは――」


先生がそこまで言ったときだった。


大きな音を立てて前方のドアが開いたのだ。
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