江藤くんはループしがち
生徒たちの視線が一斉にそちらへ向かう。


「遅刻しました!」


息を切らしながらそう言い、苦笑を浮かべたのは江藤君だ!


あたしは唖然として江藤君を見つめる。


走ってきたようで顔は赤く染まり、呼吸は荒い。


そのままあたしの隣の席に座った。


「遅刻してきたときはもう少し静かに入ってきなさい」


先生は江藤君へ向けて呆れた表情で注意する。


しかし、真央ちゃんのことがあったばかりだから、その声は優しかった。


江藤君はいたずらっ子のように舌を出して「ごめんなさい」と、あやまった。


江藤君が……来た……!!


あたしはまだ信じられなくて隣の江藤君を見つめる。


視線に気がついた江藤君がこちらを向いて「おはよ」と、口パクで言った。


あたしも同じようにして返事をする。


それでもまだ信じられない。


江藤君が来た。


江藤君は生きている!


でも、それじゃあ先生が深刻そうな顔をしているのはどうして?


疑問が浮かんできて教卓へ視線を戻す。


そのときだった。


「実は今日、抜き打ちテストがある!」


先生からの重大発表に、教室中からブーングが沸き起こったのだった。
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