江藤くんはループしがち
☆☆☆

持久走の授業は正直きつかった。


走っても走っても走っても走っても、終わりを告げる笛が鳴らない。


今何週しただろう?


今どこを走ってるんだろう?


だんだんわからなくなってきて、つい足が止まってしまいそうになる。


それでもどうにか足を前へ出して必死に走った。


足は速いほうじゃないけれど、持久走にそれは関係ない。


とにかく20分間自分のペースで走ればいい。


あれほど寒いと感じていた外気温も今は暑くて仕方ない。


背中や額に汗が流れていって、ジャージを脱ぎ捨ててしまいたくなる。


「はい、あと1分だよ!」


先生の声が聞こえてきた瞬間、走るスピードがグンッと上がった気がした。


後1分。


後1分なら走りきることができる。


息が上がり、肺が圧迫されている感覚がする。


頬は冷たいのか熱いのかわからないし、鼻の頭も感覚がない。


後1分。


後1分。


ちょっと待ってよ、1分ってこんなに長かった?
< 73 / 121 >

この作品をシェア

pagetop