江藤くんはループしがち
先生の言葉に疑念を持ち始めて、ようやく終了を告げる笛が聞こえてきた。


今まで張り詰めていた空気が一気に和らぎ、足が前に出なくなる。


小鹿のようによろよろと2、3歩歩いてすぐに座り込んでしまった。


地面に両手をついて肩で何度も深呼吸をする。


冷たい空気が肺に突き刺さって痛い。


それでも体は酸素を求めていた。


「あぁ~、ほんときつかったねぇ」


体育の授業がどうにか終わり、着替えをしていると里香が赤い頬でそう言った。


「ほんと、きつかった」


あたしは眉間にシワを寄せて答える。


最近の授業の中で一番きつかったかもしれない。


これならお昼ご飯の後の5時間目に数式を頭に叩き込むほうがまだマシだったように感じられる。
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