江藤くんはループしがち
☆☆☆

そして掃除時間も終わり、終わりのホームルームの時間がやってきた。


江藤くんはごく普通に先生の話を聞いている。


このまま1日が終わっていくんじゃないかと思われたその瞬間だった。


江藤くんがサッと青ざめたのだ。


こちらへ視線を向けて何か言おうとしている。


「どうしたの?」


江藤くんに身を寄せて子尾声でそう質問をしたときだった。


グニャリと景色がゆがんだ。


先生の声も、江藤くんの声も。


いけない!


そう思っても、元には戻らない。


江藤くんは確かになにかに気がついていた。


でも、それをあたしに伝える時間はなかったのだ。


「あー……」


黒板の上に設置された時計を見て、あたしは思わず声を出しながらため息をついていた。


時刻は8時半。


もちろん、朝の、だ。


教卓の前には先生が立っていて、持久走の話をしている。


また戻ってきてしまった。


悔しくて江藤くんへ視線を向ける。


江藤くんは頬杖をついて先生の話を聞いていた。
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