江藤くんはループしがち
4度目の正直という言葉があれば今使いたい気分だった。


あたしはまた持久走をやっていた。


何度やってもいちからなのでタイムが伸びることもない。


ただ疲れだけは蓄積されていく気がするから不思議だった。


息を吸い込むたびに肺が痛いと感じる。


肌に当たる冷たい風は熱く感じる。


足はもう前に出ないくらい疲れているのに、先生の笛の音が聞こえるまで止まることはできない。


グッと歯を食いしばって前へ前へと向かう。


時々男子の授業へ視線を向けてみるけれど、やっぱり江藤くんを探すような暇はなかった。


「後1分!」


もう聞きなれてしまった先生の声。


ここからが長いことももうわかっていた。


ひぃひぃ言いながら持久走を終えても、まだやることは残っていた。


「亜美、早く!」


よろよろと歩いて更衣室へ向かうあたしを、里香が叱咤する。


里香は思った以上に元気が残っているようで羨ましく感じる。


他の生徒たちよりも先に更衣室へ入り、手早く着替えをした。


一度目のときは着替えをするのもしんどかったけれど、今はそうも言っていられない。


みんなの消臭スプレー攻撃を受ける前に更衣室を出て、男子更衣室へと急いだ。
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