クールな副社長の秘密~偶然知ったら溺愛されて妻になりました~
 そんなふたりの甘い空気の中、「コホンッ」と社長の咳払いが聞こえた。

 慌てて樹から離れる桃華に、父親に向かってチッと舌打ちする。

「おはよう。邪魔して悪いな」

「おはようございます」

「ホント邪魔」

「おいおい。樹は帰ってくれてもいいぞ」

 朝から言い合う親子を見て、すごく仲が良いと思う。

「朝食にしましょう。今日は樹さんの食パンを贅沢に厚切りにさせてもらいました」

「こんなに厚切りにした事はないな」

「私、食パンは切ってない物を買ってきて、色々試してるんです」

「へぇ~。いただきます」

「桃華さん、いただきます」

「はい。いただきま~す」

 もうすっかり家族として馴染んでいる。

「「ウマイ!」」

「わぁ~良かったです」

「いつものパンなのに、このカリっとした食感と中のフワモチっとした食感。信じられない……」

「ああ。里子のパンを思い出したよ」涙ぐむ社長。

「確かに、母さんのパンを思い出す」

「桃華さん……」「桃華……」

 社長と樹の胃袋まで掴む桃華だった。


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