クールな副社長の秘密～偶然知ったら溺愛されて妻になりました～

「樹さん、そこの通り沿いの和菓子屋がうちのお店です」

　金閣寺の近くの一等地に建つ立派な店構えだ。定休日で照明は消えているが、周囲の景観と調和する昔ながらの建物に、入口から若い女性も入りやすいモダンな雰囲気が伝わる。内装はリフォームをしているようだ。一見和菓子屋だとわからない。

「オシャレな造りだな」

「数年前、兄の意見でリフォームしたんです。昔ながらの和菓子屋の雰囲気も悪くなかったんですが、外国人観光客は物珍しさで来てくれても、若いお客さんが少なくて。特に、今はインスタ映えなど意識する時代ですしね」

「確かに」

「見事に成功したようで、昔ながらの練りきりも、イートインで出してる和スイーツも大人気で、連日行列が出来てるみたいです」

「それは忙しいだろうなぁ」

「水曜の定休日にも、兄は下ごしらえや新作の開発もしているみたいで……。兄妹揃って相手がいないって母がよく嘆いてます」

「お義母さんは、反対ではないんだな？」

「はい。寧ろ早くどちらかでも結婚してほしいと常々言ってます。お友達の家にどんどん孫が出来るのが羨ましいそうです」

「それなら助かる……」と呟いた樹だが、桃華には聞こえなかった。