クールな副社長の秘密~偶然知ったら溺愛されて妻になりました~
 今まで見たことのない強引な樹。

 想いが通じあっている今の桃華に恐さはない。ただ、未知への扉が開かれる緊張が襲う。

 樹と付き合ってから、いつかこんな日が来るだろうと予想はしていた。こんなに急にやって来るとは思っていなかったが……。

 嫌ではない。恐いわけでもない。いつもの甘い樹も好きだが、今日の強引な樹にもドキドキする。

 樹も余裕がないのか、桃華の手を引き歩みを進める。

 そして、やって来たのは駅直結の高級ホテルだった。

「三木谷です」

 フロントで名前を告げるとすぐにカードキーが差し出された。

「三木谷様、本日はお越しいただきありがとうございます」

 鍵を受け取り案内を断った樹は、桃華の手を握り無言でエレベーターを目指す。

 普段の大人な副社長様の余裕のない姿。そんな姿にさせているのが自分だと思うと、桃華は嬉しくなる。

 エレベーターに乗り込むと樹は最上階の27のボタンを押した。

 エレベーターの中はふたりだけの空間。

 我慢していた樹の我慢の糸が切れかけている。

 桃華の手を引き自分の腕の中に抱きしめ気持ちを落ち着ける。

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