クールな副社長の秘密~偶然知ったら溺愛されて妻になりました~
「ただいま戻りました」

 桃華がミキタニ邸に帰りついた頃には夕方になっていた。中からは走ってくる足音がする。

「桃華おかえり」

 樹は一日会えなかっただけで恋しくて仕方なく桃華の姿を見た途端強く抱き締めた。

「樹さん?」

 中々離してくれない樹に声を掛けた。

「桃華が一日でもいないと耐えられない」

「私も会いたかったです。嬉しい」 

 最初は温度差のあったお互いの想いが近づいている。

 樹の腕の中から解放され樹を見るとかなり疲れた顔をしている。

「樹さん大丈夫ですか?」

「ん?何がだ?」

「目の下にクマが出来てます」

「ああ。今日も朝から社に行っていたんだが……」

「そうですか。どうでしたか?」

 あくまでも、社の方で解決策が見つかった際はそちらを優先するため、実家も先程のお店も最終の依頼の連絡は月曜日にしてもらっている。

「ああ。色々交渉したようだが、期間が短すぎて断られるよ」

「そうですか」

「ああ。営業部はピリピリした様子だった……」

「樹さん。昨夜、実家に戻って交渉してきました」

「ええっ」

「父と兄に状況を説明して何とか三種類用意してもらえるように交渉しました」

「桃華……」

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