クールな副社長の秘密~偶然知ったら溺愛されて妻になりました~
 桃華が答えるより先に、受付の女性ふたりが慌てて立ち上がり、頭を下げながら返事をする。

「藤堂室長、お疲れ様です。今、連絡を入れようと思っていたのですが、商品企画部の相川さんです」

 桃華に対峙していた時より、ワントーン高い声で言い訳から入る様子を見て桃華は呆れる。

 きっと絵理香の先輩だろうが、ふたりの態度を見て絵理香を尊敬する。この人達に囲まれて仕事するだけで、神経を使いそうだ。

「相川さん、副社長がお待ちです。こちらへ」

 室長と呼ばれた男性は、受付の女性を見ることなく桃華へ話し掛ける。

「はあ」

 戸惑いしかない桃華は、曖昧な返事しか出来ない。

 受付の女性ふたりの視線が更に険しく突き刺さり、桃華を睨んでいる。

 そんな受付の横を通り、室長の後をついて行くしかない。帰りもここを通るかと思うと恐ろしい。



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