クールな副社長の秘密~偶然知ったら溺愛されて妻になりました~
 個室内は一気に静かになる。

 窓の外には、大阪湾が見えるのだろうが、もう辺りは真っ暗だ。遠くにポツポツ明かりが見え夜景は楽しめる。

「おまかせコースを頼んでいるが、食べれないものはあるか?」

「いえ」

「飲み物は?」

「副社長は、何を飲まれますか?」

「車だから、スパークリングウォーターにするよ」

「じゃあ、私も同じ物で」

「飲んでもいいんだぞ」

「いえ。まだ月曜日ですし」

「そうか」

 さっと、ふたり分の飲み物を頼んでくれ、前菜と共に運ばれて来た。

「さあ、食べよう」

「はい。いただきます」

 手を合わせて食べ始めた桃華を新鮮な思いで見つめる。

 樹の周りは露骨にアピールする女性ばかりで、桃華のように控えめな女性が珍しく好感が持てる。

 桃華の場合は、控えめと言うよりは非現実過ぎて、まだ受け入れる事すら出来ていないだけなのだが……。

 それでも、基本食べることが大好きな桃華。

「何これ!美味しい!」満面の笑みを浮かべる。

 さっきまでの緊張が嘘のような心からの笑顔に、樹の胸は高鳴る。

 計算などない、ただ純粋に料理を楽しんでいるだけの桃華は、まさか更に樹の心を惹き付けているなんて思いもしない……。

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