クールな副社長の秘密~偶然知ったら溺愛されて妻になりました~
 藤堂は、商品企画部での用事を終え副社長室に戻った。

 『コンコン』とノックの後いつものように副社長室に入って驚く。

 室内のソファには、樹と社長が向かい合って座っている。しかも、先程この部屋を出ていく際の樹とは違い、今までにないくらい不機嫌な様子だ。

 そもそも、普段から社長とのやり取りは内線で済ませる樹の部屋に、社長自ら来ているのだ。何事だろうと思う。

「親父、本当にいい加減にしてくれ」

「そういわれても、話が通じなくてな」

 藤堂は何の話か全くわからない。だが樹は仕事中は必ず社長と呼ぶので、どうやら仕事の話ではないらしい……。

「どうするんだよ」

「具体的な日程が決まっていた訳ではないから、様子をみるしかないな」

「はぁ~」

 ここで話が一段落したようなので、疑問を口にする。ふたりは、藤堂が入って来たことには気づいていたが意識はしていなかった。

「社長。おはようございます。席を外しておりまして失礼いたしました」

「おはよう。気にしないでくれ」

「ところで、おふたりはなんのお話をされているんでしょうか?」

「……」樹は藤堂に何も伝えていない事を思い出す。

「それは樹に聞いてくれ」

 社長はさっさと退出していく。


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