平成極上契約結婚【元号旦那様シリーズ平成編】
退勤後、私たちが訪れたのは六本木の雑居ビルのバー『ラージャ』。OLたちに人気のあるバーでいつも混んでいる。

会社のある新橋から電車で二十分ほど。十八時にタイムカードを押して制服から私服に着替え寄り道せずに来たので、現在は十八時四十分。

七階建ての雑居ビルの五階にある『ラージャ』のドアを押して入ると、入り口近くのカウンターの中でシェイカーを振っていた口ひげをたくわえたマスターが営業スマイルを浮かべる。

「いらっしゃいませ。おうっ、ひとみちゃんと明日香ちゃん。どうぞ入って」

「マスター、久しぶりー」

ひとみは弾むような足取りでマスターの前へ歩を進め、カウンターに片肘をついて寄りかかる。そして魅惑の笑みからのワンレンの髪をかきあげる。

「今日は早いね」

「そうなの。シーフードピザとシーザーサラダ、それとマルガリータね。明日香は何がいい?」

「えっと……、ヴァイオレットフィズで」

私はここでいつも飲むカクテルを頼む。

「はいよ! 空いてるとこ座って」

テーブルが十五卓ほどの店内を見回し、私たちはいつも座る奥へ向かった。

店内はオレンジ色の明かりで程よく暗くなっている。落ち着いたムーディーな曲もかかっており、会話を邪魔しない。

椅子に腰を下ろしてすぐに店員が水の入ったコップを持ってくる。店員が立ち去るのを待ってひとみが待ちかねたように口を開く。

「で、またいつもの悩みね?」
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