平成極上契約結婚【元号旦那様シリーズ平成編】
私が十八歳のときから今に至るまで三度しか会ったことがないのに、彼に一目惚れしてからずっと憧れていた。

「円城寺さんに会っていないけれど、時々載る経済誌や週刊誌に顔を見ているもの」

「今を時めく旧財閥の円城寺家の御曹司だから世間の注目を浴びているのは当然だけど、週刊誌を見るたびに落ち込んでいるじゃない」

円城寺真吾さんは土地や街を開発することを生業としている日本最大手の不動産会社の創始者の孫。現在代表専務取締役でゆくゆくは社長になる人だと経済誌に書かれていたことを思い出す。

三高を気にしないと言っている私だが、彼は三高の上を行く「高」を数えたらきりがないくらい完璧な人なのだ。

そんな彼は最高学府である大学を卒業後、イギリスの入学が難しいと言われている大学も出ている。

兄とは日本の大学からの友人だった。

「そのときは落ち込むけど、結局は週刊誌なんて全部デマだし」

「そんなに憧れているのなら、アタックしてみれば?」

ひとみが軽くけしかけたとき店員が注文した料理とカクテルを運んできた。

丸テーブルに並べると、店員はひとみの方を興味深げに視線を向けてから去って行った。

「おいしそう。明日香、食べよう」

「あの店員さん、初めてよね? ひとみのことが気になるみたい」

ひとみはピザをつまんで口に持って行くところを止めて、彼女は店員の背に視線を向けてすぐに戻す。

「んータイプじゃないな」

そうバッサリ言い切って、タバスコをたっぷりかけてからピザをパクッと食べる。
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