平成極上契約結婚【元号旦那様シリーズ平成編】
到着したのは日比谷の世界各国の要人やセレブなどが利用する日本を代表する高級ホテルだった。

エントランスで車を降り、有名人の円城寺さんから離れて私は歩を進める。

白い制服を着たドアマンが腰を折って私たちをロビーに促す。そこを過ぎたところで円城寺さんが振り返る。

周りを気にしながら歩いていた私は彼の切れ長の奥二重の目と目が合って、ビクッと肩を跳ねらせる。

「マスコミを心配している?」

「ま、まあ……円城寺さんは時々週刊誌に載っているので」

表情硬くそう言った瞬間、彼は口元を緩ませ『クッ』と笑った。

「君はよく週刊誌を買っているみたいだな。大丈夫。マスコミがいないことは確認済みだ」

マスコミがいないことまで把握している円城寺さんに驚かされる。先にフロントへ向かった石原さんが有能なのだろうか。

「行くぞ」

円城寺さんは長い足でスタスタとエレベーターホールに向かった。

フロントでルームキーを受け取っていた石原さんも合流し、やって来たエレベーターに乗り込む。

広さのあるエレベーターの後方部の真ん中に立った円城寺さんは腕を組み、ゆったりと到着階を待っている。

私と言えば、パネルの反対側に立ち緊張した面持ちで上昇するインジゲーターを見ていたが、斜め後方に立つ円城寺さんの視線をひしひしと感じていた。

ここまで来たんだもの。恥を忍んで円城寺さんにお願いをしよう。

気を引き締めるために、私はキュッとした唇を噛んだ。
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