【短】好き好きびーむ☆
「一成なんか…しーらない!」
「あ…待って。待てったら…」
「知らないもーん」
デートの定番である噴水のある公園の中で、踊るようにして逃げる麻子と、それを追う俺。
傍から見たら、バカップル全開なんだけれども。
それは、事実だ。
潔く認める。
でも、すり抜けていく麻子を追い掛けている内に、なんとなく、
『あー…俺っていっつも必死だなー…』
と、思い足を止めてしまった。
「一成…?」
「あ、ごめん」
「怒ってる?」
「そんなことないよ」
瞬時にして、しょぼんと肩を落とす麻子の髪をくしゃくしゃと撫でる。
「一成?」
「…ん?」
「好き!」
きゅっ
握り締めてきた小さな手はとても冷たくて、俺はその手を自分のコートのポケットに入れてから、
「俺も好きだよ」
と、軽くもう一方の手で前髪を掻き上げおでこにキスをした。