【Eater】人喰青年血染喉詩【EP0】
駐車場に停車する。ユイナが料金を払って店に入る。後続車も車を止めた。
「どうする?」
「どうするか?」
中にいたスーツ姿のオッサンも入ってきた。
服を適当に選んで抱える。レジに並ぶ時間は無い。
「これください」
そう言ってユイナは万札をメンテナンスをしていた店員に渡す。選んだ服は上下でも4千円くらいの筈だ。しかしそうも言ってられない。
「え」
店員は戸惑っていた。
ユイナは私の手を取って店内を走り出す。スーツも走り出す、全力疾走。人をかわす。マネキンをかわす。品物をかわす。とにかく走った。客に紛れて、走った。人混みの中を走り続けた。店の外まで出た。
「こっち!」
息が苦しい。心臓が苦しい。傷口が痛む。外に出るとあたりはもう真っ暗だった。その事もいい影響して逃げ切る事が出来た。多分見失っただろう、ついて来るものはいない。
「苦しい」
「怪我人をこんなに走らせるなよ」
「しょうがないじゃん」
二人とも息が上がりやっとの思いで話す。まだ苦しい。しかし何故だか高鳴る鼓動に生を感じた。
「あの買い方はないわ、店員めっちゃビビってたじゃん」
「しょうがないじゃん!」
人影ない路地で買った服に着替えた。少し安っぽいが仕方がない。
「この後どうする?」
「とりあえず高崎に行こう」
「高崎?」
「うん、いろいろそろえたいし、人混みの方が逃げやすいと思う」
「そうか、何で行くの?またタクシー?」
「いや、もう駅も近いから電車で行こうと思う」
「大丈夫かな?」
「賭けるしかないね」
「うん」
「どうしたの?疲れた?」
「うん、ちょっとね」
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