【Eater】人喰青年血染喉詩【EP0】
電話は切れた。久しぶりにユイナの声が聞けて安心した。緊張の糸が解ける。電話を返しに立ち上がろうとしたがまだ傷が痛む。まだいいか、そのうち取りに来てくれるだろう。ユイナどれくらいかかるだろう、スマホで調べようと思ったが持っていないのだった。退屈だ。スマホがないとする事がない。外にも行けないし、ユイナが待ち遠しい。
暇だな、もう眠気もない。いざスマホを手放すとどれだけ依存していたのか分かるな。窓の外には空と山と駐車場、大自然だ。たまにはこういうのもいいのかも知れない。窓際のベットでよかった。日差しが温かい。
ズキっと傷が痛む。しかしアレはいったい何者だったのだろう。分からない。思い出すだけで悍しい。動悸がする。苦しい。ここは本当に安全なのだろうか不安になる。
嗚呼喉が乾いた。腹も減ってきた。ここの料金とはどうなるんだろう、財布もどっか置いてきちゃったしカードもその中だ、いったいこのあとどうなるんだろう。
「風間くんよくなりましたか?」
「ああ、だいぶ気分は落ち着いてきました」
「怖い体験をされたのだとか」
「あ、はい、そうなんですよ、あの、何か飲み物いただけないでしょうか?」
「お水なら大丈夫だけど、それでも良ければ今持ってくるね」
炭酸が飲みたい。若い看護師は嬉しいが正直注射が下手だ。注射に限っては熟年の技術で刺してもらいたい。
「はいお水ここ置いときますよ」
「あ、はい、ありがとうございます」
ゴクリと喉を潤う。気持ちがいい。少し落ち着く。
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