恋愛の偏差値
決意!

愛菜いつも僕のそばで笑ってて・・

小さい頃からいつも一緒だった蓮がいつも私に言ってくれてた言葉・・
いつも蓮が言ってくれてたから、その言葉が当たり前の様に感じてしまったのかもしれない。
今は、こんなに蓮に言って欲しい言葉になるなんて・・

蓮とは家が近くて、親同士も仲が良かったからいつも一緒に遊んでた。
中学生になると自然と私達は遊ぶこともなくなり、会話も段々と少なくなってきた。
同じクラスだったけど、クラスメートの1人として接する様になったと言うより
そうするしかなかった。
係を決める時も、蓮に合わせた訳でもないのに同じ係になり・・
席替えもくじ引きなのに、蓮の横になることが多かった。
そのせいで幼稚じみた男子たちが、まるで私が蓮を追っかけているように騒ぎ立てた・・
その頃から、近かった距離がすごく遠く感じるようになったのかもしれない・・

「また春原が蓮の横だよ」
「絶対、わざとじゃね」

また男子のくだらない会話が聞こえてくる度に、いつの間にか蓮を避けてた。

「愛菜、大丈夫?」
「うん・・いつものことだから。何でこんなにも蓮のそばになるんだろう・・」

いつも慰めてくれる神谷結奈は、スラッとした長身に長いサラッとした髪が本当にモデルさんのように綺麗で
同い年なのにしっかりしていて、お姉ちゃんみたいにいつも私を引っ張っていってくれる存在。

「愛菜、何でそうもくじ運がないの?」
「分からないよ・・私だって好きで選んでる訳じゃないもん・・」

そう言いながら机に顔を伏せた。
机の冷たさが、顔全体に伝わってくる。
本当に何でだろう・・
中学校になってからは、からかわれるのが嫌で蓮を避ける事に必死で・・
私が好きだと噂をされれば、蓮に迷惑が掛かると思っていた。
本当は、蓮と話したい・・
そう思いながら、月日だけ流れあっという間に高校生になった。

高校受験の間、放課後に聞いた言葉を思い出していた。
教室に忘れ物をして、慌てて取りに行った時に、教室で数名の男子達が話している声が聞こえた。
教室の扉が少し開いていて、そこから覗くと蓮達がいた。
入ろうかと扉に手を掛けた時

「蓮は彼女作らないの?」

・・えっ・・
教室に入れない。壁に背をもたれながら教室の中の会話をドキドキしながら聞いてた。
蓮に好きな人がいたらどうしよう・・聞きたい反面、答えが怖かった。
だけど、その場から離れることができず蓮の言葉を教室にいる男子と同じように待ってた。
「中学では作らない。俺と同じ高校に行くか分からないし・・別々の学校に行って他の男に取られたらヤダから」

結局、そのまま教室に入ることが出来ずそのまま下駄箱の方へ向かった。
階段を降りながら、踊り場の窓からさす夕日の眩しさに心まで照らされてる気分だった。
蓮と同じ志望校だ時いたのは最後の進路決定をした日。
親同士も仲が良かったから、ママから私と同じ志望高校を目指してると聞いた時
蓮と同じ高校に行けるならと受験勉強も頑張れた。
だから蓮とは同じ高校に受かった時は、本当に嬉しかった・・


何度も鏡に向かって髪型が変じゃないか、制服のリボンが曲がっていないか何度も確認した。

「愛菜!遅刻するわよ!」

ママの声で、時計を見るとすでに結奈との約束の時間になってた。
・・ヤバい!
慌てて階段を駆け降り、リビングに入ると朝食が用意されていたけど、パンだけで手に取り
行って来ますとの挨拶と共に玄関へ向かった。
パンを咥えながら、慌てて靴を履いて玄関の扉を開けると待ち合わせ場所にいるはずの結奈が笑いながら立ってた。

「やっぱりね!、愛菜のことだからきっと身支度に時間がかかって遅刻寸前かなと思って来てみたら予想通りだね」
「ごめん、結奈・・結奈の仰る通りです・・」

春の空気は、季節の中で一番好きだ。
優しい香りがする。
両手を広げて、思い切り空気を吸い込んだ。

「よし!」
「愛菜、気合が入ってますな」
「高校生になったら、今までの逃げてた自分とさよならするって決めてたから」
「そっか、頑張れ!」
「うん!」

高校へ向かう途中に桜並木がある。
桜の花びらの雨のように風が吹くだび、桜吹雪が舞っていた。
綺麗・・学校へ向かう足も軽くなった気がする。
新しい制服に身を包んだ人混みの中、蓮の姿を探すけど見つけれない。

「愛菜」

結奈が指さした方を見ると、蓮が校門に向かって歩いてた。
中学から一気に身長が伸びて、一段とカッコ良くなった。

「愛菜、モタモタしてると誰かに蓮を取られるぞ!
 あれはモテるね・・間違いなく。イケメン、背が高い、スポーツができる
 なにより優しい!こんなに好条件が揃ってれば他の女子は
 ほっとかないね」
「わかってるよ・・」

早速、別の学校から来た子達が蓮をみて騒いでる。
高校でも蓮とは同じクラスになった。
クラスに入ると窓際に座って、外を眺めている蓮がすぐに目に入った。

「愛菜、席見てみな。蓮の横だよ」
「えっ」

黒板に書かれている席表を見ると蓮の横だった。
横に座ると、蓮が私に気付いた

「愛菜、また同じだな」
「そうだね・・」

久しぶりに蓮が愛菜って呼んでくれた。
中学の時は、からかわれるのが嫌で、お互い名前を呼び合わなかった。
目があったら、何となく会話して・・

「加賀谷君、私夏目舞よろしくね」

急に3人組の子達が蓮に話しかけてきた。
校門のところにいた子達だ。
同じクラスになったんだ。
髪が長くて、身長もスラっとしていて目が大きくてお人形さんみたい。
可愛いらしい子だな・・

「よろしく」

蓮は一言答えると、すぐに外を見てこれ以上会話をしたくない雰囲気を悟ったのか
女の子達はその場から離れた。

「マジ、格好いい」

会話が聞こえてくる。
やっぱり、蓮はモテるんだな・・
改めて、気付かされた気分だった。

「愛菜、あのさ・・」
「蓮!」

蓮の言葉が男子の声でかき消された。
何を言いかけたのか、分からないけど蓮は何を言いたかったのかな・・
蓮は呼ばれた方に、行ってしまった。
廊下で他の男子達と楽しそうに話してる。

「愛菜、蓮と話したの?」
「うん・・一言だけ・・」
「何やってるの!高校に入ったら蓮との距離縮めるんでしょ!」
「分かってる・・だけど急に昔みたいに蓮と話せなくて・・」
「愛菜、もしかしたら蓮も同じ気持ちなんじゃないかな・・」
「そんな事ないよ・・中学でも蓮は私にあんまり興味なさそうだったし・・」
「そうかな・・」

生徒手帳を開いた。
そこには、小さい時に一緒に蓮と撮った写真がある。
私の唯一の宝物・・
きっと、蓮は覚えていないだろうな・・


「蓮、春原って可愛いよな」
「えっ」
「俺も!中学の時から可愛いって思ってた」
「でも、中学の時は蓮のところが好きだっと思ってた」
「みんな言ってたよな」
「・・あいつ・・そんなにモテるんだ・・」
「えっ、蓮何か言った?」
「何でもない・・」
教室の中を見ると、愛菜は結奈と楽しそうに笑ってる。
俺を好きなんてないよな・・

「おーい、みんな席につけよ」

担任の岡野が入ってきた。
みんな席につき始めて、ガヤガヤしていた教室が一気に静かになった。
蓮は相変わらず、窓の外を眺めてた。
その横顔を見ていると、吸い込まれるように見入ってしまう・・
一通りの学校の説明をしていたけど、先生話がBGMのように流れて消えるだけだった。
いつの間にかホームルームが終わっていた。

放課後、教室で結奈と話していると男子達が教室に入って来た。
その中に蓮の姿もあった。

「春原達も一緒に行かね?」
「どこに?」
「俺らこれらからカラオケ行くけど、一緒にどう?」

結奈が私を見て

「どうする?」
「えっ」

思わず蓮を見てしまった。
蓮は目が合うと、すぐに目を逸らした。
・・迷惑なのかな・・
蓮のそんな姿を見ると、私が言っていいのか分からなくなった。
そんな姿を見て、結奈が口を開いた。

「私達、特に予定がないよ。いいじゃん!行こうよ。ねっ、愛菜?」
「えっ、うん」

蓮はどう思ってるのかな・・
迷惑なのかな・・
そんな事ばかり考えてしまう・・
みんなの後をついて行くので必死だった。

「愛菜、チャンスだよ!これで少しは蓮と話せるんじゃない?」
「話せるかな・・蓮は迷惑そうだど・・」
「そうかな・・」

蓮は一番後ろから、面倒臭そうに後ろを歩いている。

「蓮・・あの・・」
「ん?」
「迷惑だった?」
「別に・・」

やぱり迷惑だったんだ・・
帰ろうかな・・

「愛菜、久しぶりだな。こんな風に話すの」
「そうだね・・中学の時少し話したくらいかな」
「あれは、話したうちに入るのか?」
「えっ、そうだね」

蓮と目を合わせてお互いが自然に笑った。
どれくらい振りなんだろう・・
蓮とこうして笑い合ったの・・
笑った蓮の顔は、昔から優しい顔をしている。
学校からカラオケのお店までの道のりが、凄く近く感じた。
お店に入ると順番待ちしているグループが何人もいた。

「加賀谷君!」

聞き覚えのある声がして、声の方へ目をやると舞がいた。

「偶然だね!加賀谷君達も来てたんだ」
「ああ」

蓮がそっけなく答えても、舞は気にせず話を続けてた。

「もし良かったら、みんなで一緒にカラオケしようよ」

蓮が答えずにいると、周りの男子が

「いいじゃん!大勢の方が楽しいし、みんなで一緒にカラオケしようぜ」

結奈が慌てて、私に

「愛菜、いいの?」
「しょうがないよね・・」

また蓮とゆっくり話ができないのか・・

「今回はパス!悪いけど帰るわ。愛菜、今日お前も用事があるだろ」

蓮が急に、私の腕を引っ張ってカラオケの出口に向かった。

「待ってよ。加賀谷君!」

舞の言葉が後ろから聞こえるけど、蓮は聞こえていないかのように歩き出した。

「蓮、いいの?」

蓮は無言のまま歩き出して、何も話をしなかった。

「蓮・・あの・・腕・・」
「あっ、ごめん」

慌てて腕を掴んでいた手を離した。

「痛かった?」
「ううん、大丈夫」
「今日、まだ時間ある?」
「うん、大丈夫」
「俺の好きな場所があるんだ。そこに行こうぜ」
「いいよ」

蓮のお気に入りの場所・・知れるだけでも嬉しいのに・・
蓮と一緒に行けるなんて・・





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