貧乏国の悪役令嬢、金儲けに必死になってたら婚約破棄されました【短編】
「急な用事ってなんですか?」
 ごにょり。
 抜け駆けするんです。言えません。
 いい匂いの木……。香木じゃないけど、金になりそうないい匂いの……美味しそうな匂いの木が見つかったんです。
 ああ、金の匂い。ちがう、金の匂いじゃない……。
 ぶんぶんと首を振る。
「おいしいものを見つけたので、お母様にお土産を持って帰りたいのですっ」
 と、半分本当のような、苦し紛れの言い訳のような、なんか、えーっと、どうしたらいいかなぁ。
「おいしいもの?なんだそりゃ?」
 と、思ってたらドーンがおいしいものっていう単語に食いついた。ラッキー。

「ウエイトレスさんに教えてもらったとびっきりのお菓子。今まで食べたことのない味だから、えっと、お母様がお茶会をするときに皆さんにお出しするのにいいかと」
 と言うと、ドーンはがっかりした顔をする。
「ちぇ、お菓子かー、甘いもんは俺はパス」
 と、どかりとサラの隣の椅子に腰かけた。
「ここの肉料理もおいしかったですよ。今から私たちそのお菓子を買いに行ってきますので、行きましょうサラ」
「あっ」
 天使が悲鳴のような声をあげる。
「えっと、お菓子を買ったら戻ってくるわ。お腹すているでしょう?先に食べちゃってごめんね?」
 戻るって言ったら、やっとほっとした顔をしてエイト君が席についた。
 うーん、どうしたらいいでしょうね?一刻も早く戻ってシナモンを国の産業へと育て上げたいのですけど……。一人旅させるのは忍びないですよ。
 あ、ドーンと二人旅か。
 ……暑苦しそう。
 お菓子屋には10種類くらいの焼き菓子が並んでいました。
 クッキー類が中心で、あとは柔らかそうなスポンジケーキ、しっとりと重たそうなものもあります。ドライフルーツがたっぷり入ったものもあります。
「一つずつ説明してもらってもいいですか?」
 と、お願いすると、同じ年くらいの店番をしている男の子が丁寧に説明してくれた。
 日持ちのするものを5つずつ、日持ちのしない者は3つ……うぐぐ、仕方がありません、必要経費です、4つずつ購入。
 って、購入してから思い出した。ドーンって、甘い物苦手って言ってた!しまった!いらなかったじゃないか!
 気を使ってドーンの分まで買ったというのに、失敗した……返品……うぐ、言い出しにくいです。もう包んでくれています。
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