貧乏国の悪役令嬢、金儲けに必死になってたら婚約破棄されました【短編】
「あの、今買ったお菓子、日持ちする王都の友達へのお土産にいたしますが、もしかするとお菓子付きの友達の家の者が、レシピを伺いに来るかもしれません……。その、お手数をお掛けいたしますが、その時は対応をお願いいたします。もちろん、教えられないことに関しては教えなくても構いませんから」
 さすがにまだ正体を明かすわけにはいかないので、公爵家の者がとは言えない。だけど、突然公爵家の者が訪ねてきたらびっくりさせちゃうと思うんだよね。
 あらかじめこう言っておけば「前に買いに来た人の王都の友達と、やらがまさかの偉い人だったんだ、びっくり」くらいで済むと思う。
 ……すまないかな?まあいいか。
 まだ、お菓子を食べてもいないし、計画を持ち帰って検討もしてない段階で、いろいろ余計なことを言うわけにもいかないもんね。
 買い物を終えて外に出る。
 でもって、道行く人に声をかけた。女子ね。女子。
 これでも婚約者がいる身ですから、私から男性に声をかけるわけにはいきません。
 って、ふふふ、なんか、楽しい。婚約者がいる身っていうフレーズ楽しいわ。

 女子に声をかけたのは単にお菓子のことを尋ねるのには男子よりもふさわしいと思っただけだよ。
「今こちらのお店でお菓子を買ったのですが、この街にはほかに美味しいものどこかに売っていませんか?」
 パン屋にもシナモンパンという美味しいものが売っていると情報をゲット。
 行くわよ、サラ!
 ええ、お嬢様!
 っていうツーカーを発揮して顔を見合わせるだけで心が通じるって素敵!
 ん?サラの顔が3件目に向かう時には若干「ええ、お嬢様!」から「ええー?またですかぁ」的なものに見えたけれど、気のせいね。うん、気のせいよ。
 というわけで、2軒目でシナモンレーズンパンと、シナモンハニーパンを購入。3軒目では、シナモンの香り袋を買いました。
 なんと、あのうっとおしい、刺されるとかゆくなるし、赤くなるし、迷惑なぶぅーんって飛んでくる虫よけになるそうです!
 うわー、これは、また、新たな販路開発ができそうです!
 どうやって売り込みましょうか。
 くくく、金に匂いがするぜ。
 シナモンの匂い袋をクンカクンカしながら、にやりと笑う。
「お嬢様、悪い顔になってますよ」
「ふふふ、サラ、あたなもね!」
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