貧乏国の悪役令嬢、金儲けに必死になってたら婚約破棄されました【短編】
 でもね、でも、私はこの国の存亡のために必死なので。お金を稼がないと、国民が飢えちゃうんです。
 お金を稼がないと、国がなくなっちゃうんです。
 私、将来、国を背負う王の妻になる予定なので、内助の功ってやつをしないといけないのですっ。

 王都についてエイト君と別れるときはひとそうどうあった。
「うえー、お姉様ぁ、もっと一緒に、一緒に旅したかった」
 ぎゅっと抱き疲れました。
 ふええええっ。
 婚約者のある身なので、なのでっ。
 で、でも、これ、不可抗力。うん、私が抱き着いたんじゃないんだから、セーフだよね?
 頭撫でたり、背中に手を回してよしよししたり、ふ、不可抗力だよね?
 ほ、ほら、年下の子供を慰めてるだけで、よし、セーフ。
 おっけ!
 なでこなでこ。

 というわけで、天使の匂いもついでにくんかくんかしときました。はい。ふ、不可抗力ですから。
 
 ……っていうことがね、夏休みにもあった。
 もっともっとお金儲けの手段を探さなくちゃと、長期休暇には国内を旅するのが日課。
 で、なぜか、現れる。
「お姉様、またご一緒できてうれしいです」
 天使と笑い上戸がやってくる。
 天使はわずか数か月の間に身長が伸びたようで、2つか3つ年下の見てていたのに1つか2つ年下にしか見えなくなっていた。
 でも、相変わらずキラキラした髪と大きな目が天使。
 でもって、今度は竹を見つけた。木とちがって、竹ってすごいんだよ。
 補足して背もたれや座面を作った椅子の座り心地の良いこと!もちろん普段は座面も背もたれもクッションが当てられたものに座ってるけどね、学校の椅子は座面も背もたれも木。
 長時間座ってると痛いんだよ、体!それに比べて竹は……こう、木よりも柔らかく体を受け止めてくれる上に、暑い時期は風が通るので涼しい!クッションは柔らかいけど暑いのに!
 これは、売れる。貴族は無駄に着飾っている分暑い。涼しい商品は、売れる。間違いない。椅子やソファ、それからベッドも作れるかもしれない。
 それから、扇子とちがって、1本ずつ木を加工しなくても作れる団扇。これは便利で、庶民の間にも割と安価に流通させられるかもしれない。ふふふ。ははは。
 さっそく試作品を作らねばと、また途中で旅を終える。

「うわーん、お姉様ともっと一緒に旅がしたかったよぉ」
 デジャブ……。
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