貧乏国の悪役令嬢、金儲けに必死になってたら婚約破棄されました【短編】
 いや、まったく同じことがありましたね。
 うん、身長は伸びたけれど、やっぱりまだ子供なんですね。
 くんかくんか。

 ってことが、次の長期休暇にもあった。あ、次のっていうか春の長期休暇。流石に冬は雪で色々閉ざされるので無理はできませんでしたよ。
 というわけで、数カ月ぶりに会ったエイト君と、身長が並んでいました。
「お姉様、また一緒に旅ができるなんて嬉しいですっ!」
「なんか、同じ身長でお姉様って言われるのも不思議な感じがしますわね?」
 というと、バーンがゲラゲラと笑い出した。
「いや、何、一年もたつのに、まだわかんねぇの?流石おじょー。流石、流石!」
 バンバンと背中を叩かれました。うぐぐ、痛いからやめいっ!
「バーン、あなたも一年もたつのに相変わらず失礼でしょう!これでもお嬢様は公爵令嬢ですのにっ!」
 サラがバーンの手をパチンと叩く。
「いやぁ、すまん、すまん」
 というわけで、春です。何か金になりそうなものを探す旅です。
 そうそう、ちゃんと香木も探していますよ。
「いい匂いのする木?うーん、いい匂いのする茸なら、あれが探せるんだがなぁ」
 と、豚ちゃんを指さすおじさん。
「豚が、茸を?」
 はい。
 土の中に埋まっているので人が見つけるのは大変だそうで。
 これがまた、美味!
 始めはあまりにも強烈な匂いにびっくりしたけれど、癖になるわぁー。
 ってことで、これまた高級食材として売り込みますよ。その前に料理の研究をしてもらわないと。うちの料理人、シナモンのお菓子や料理の研究で色々と才能を見せてくれたからきっと今回も大丈夫なはず。

「お姉様ともっと一緒に旅したかった」
 デジャブ。
 いえいえ、やっぱり違う。
 ぎゅっと今まで通り抱き着かれたけれど、心臓バックり。
 身長一緒になったら、もう子供だからとか言うのも苦しい。
 あの、そのね、エイト君、私、これでも婚約者のいる身ですから……。婚約してから1年の間に、あったのは4回ほどですけど。あとは学校で顔見て会釈を交わす程度……。
 それでも、婚約者ですからね。
 まぁ、いっか。うん。
 くんかくんか。
 おや、エイト君の子供らしい匂いが、ちょっとばかし男臭くなってるような気が……?

 次の夏休みは、エイト君なしの旅になりました。何やら色々と忙しいそうで。そうか。
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