貧乏国の悪役令嬢、金儲けに必死になってたら婚約破棄されました【短編】
 うん、そうだよな。長期休暇ごとに国中旅するなんて何らかの目的がない限りしないですよね。
 私は国のために、お金になりそうな物を探さなければいけません。
 シナモンは、隣国への売り込みがスタートしたみたいです。国賓を招いた際に、料理やお菓子として提供してとりこにする作戦が少しずつ形になってきたようです。
 竹の方は、家具の形に作り上げて輸出となると、木のりは軽くともかさばるし、ちょっと輸出品目としてはよろしくなかったようで。暑い国中心にまずは王家への献上品として使うところからだそうです。
 トリュフといういい匂いの茸は、まだ準備段階で料理の研究中。

 さて。今回の収穫は、マッチというものです。
 なんだか粉にした石の何種類か混ぜたやつと、他の石を混ぜたやつとをこすり合わせると、火がつくんですよっ!
 火が、あっという間に、魔法みたいにつくんです!
 火をおこすために棒を回したりしなくてもいいんです。火打石を何度も打ち付ける必要もないんです!おこした火が消えないように見張っている必要もないんです!種火を消してしまったために食事の時間が遅れることもないんですっ!
 ああ、エイト君も見たらびっくりしただろうな。
 ちなみに、とある山の山頂の小屋にすむ親子が教えてくれました。いろんな石を粉にして混ぜ合わせて色々作って遊ぶのが唯一の楽しみだそうです。娯楽がすくないので。
 燃やすと、火の色が青とか赤とか変化して面白い物も見せてもらいました。そっちも面白そうですが、マッチのがすごいです。
 これなら小さいですし、輸出向きだと思うんですっ!むっふっふー。

 1年ぶりに会ったエイト君を見上げる。
「え、ええ?ずいぶん背が伸びたね?」
 1年見ない間に、身長が抜かされました。
「お姉様は相変わらず可愛いです」
 か、かわいい?
 今、可愛いって言った?
 いやいや、可愛いのは天使のエイトk……
 いや、もう可愛いって顔じゃない。天使の面影のある、大天使様へと成長している。
 麗しの大天使様、つまり、カッコよく成長してる。
「ふふ、すっかり身長抜かされたのに、まだお姉様って呼ぶんだ」
 ちょっとおかしくなった。
 本当の姉弟とか、よく考えると身長抜かれても姉は姉か。
 でも、私たち姉弟じゃないしなぁ。
 一緒に旅してて、ちっちゃい私がお姉ちゃんって呼ばれてたら変じゃない?
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